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先日指導に行ったとき生徒さんから「6年間トランペット吹いているのですが未だに高音が出ませんと相談されました。そうは言っていても過去には謙遜しているだけでけっこうな高音域を上手に吹く人もいらっしゃいました(苦笑)。
しかし彼女の場合は本当に出なくて第4間のミ(実音D)あたりから怪しくなりEs,Fで音は細く窮屈になりピッチは極端に上ずります。もちろん響きもありません。響きは暗く低いのにピッチは上ずっているという最悪のパターンです。
これはよくある例で響きが暗いのでピッチが低いと勘違いしてどんどん唇を締め上げるのです。チューナーはもうすぐ次の半音に到達するほどです。アンブシュアを見ると明らかに唇にテンションがなく唇がマウスピースに埋まりこんでいる感じでした。
「Lip Look」で試してもらいましたが唇は振動しません。
そこでユーフォニアムを吹いてもらいました。
普通トランペットを吹いている人だといきなり高音がでるものです。もちろんユーフォニアム奏者のような音色は出せませんが・・・
しかし彼女はユーフォを吹いても中音のBまでしか出ません。考えられる原因として唇の緊張が足りないのでどうしても締めすぎるのだと思います。
写真でもわかるように緊張が足りないと唇は前歯に密着しないのでカップ(リム)に潜り込んでしまいます。こうなると飛び出た唇のせいでアパチュアを創ることができません。
<楽に吹く>と教えられ、それを間違って解釈したときによくあるパターンだと思います。楽に発音したいからこそ適度な緊張が必要なのです。
唇に適度な緊張を作ることと締め上げることは別のことなのですが、ここのところを勘違いされている人も多いのではないでしょうか。
何も<成果?>をあげないで帰るわけにもいかなので(笑)「思い切って唇を巻き込んで見てください」とアドバイスしました。しかしなかなか巻き込むことができないんです。これには少し参ってしまいましたがなんとか巻き込めるようになりユーフォで試してもらったところいきなり高音域を楽に演奏することができ本人は<きょとん>とした顔をしていました。
「いままでもトランペットが辛いのでユーフォ吹いたことありますが、こんなに楽に高音域が演奏できたことありません」とニコニコ顔でした。
この日は時間がなくトランペットでの実践はできなかったのですが、次回きっと彼女もなにかに目覚めていると確信しています。「Lip Look」も気に入ったようで楽しそうに使っていました。しかし、いきなりの購入は高校生には負担も大きいので私の持っているうちの1本を貸してあげました。
自分自身が学んだ時代は「巻く、引く、押しつける(リムを唇に密着させる)」はトランペットを吹く上での<3大悪>のように言われていました。しかし現代の優れた奏者も観察する限りどう考えてもこの「巻く、引く、押しつける(リムを唇に密着させる)」を<3大悪>だというのはおかしい、と言わざるを得ません。
私自身が実践しているのは1.巻く(オーボエのように上下前歯より内側に入れては絶対にいけない!)2.リムを押さえつける(密着させる)3.前歯の間隔を開ける(これが一番大切)です。
この奏法にしてかなり音ミスがなくなり高音域の演奏も非常に楽になった記憶があります。もちろん感じ方、唇や歯の形など人それぞれ違うのでこの方法が正しい、あるいは絶対といっているわけではありません。しかし参考になる方もいらっしゃるのではないかと思ってはいます。